会社の評価について

M&Aは、売り手と買い手との相対の売買であり、客観的・標準的な企業価値算定方法はありません。また買収後のシナジー(相乗効果)は、買い手の状況によって異なることを考えると、買い手それぞれにおいて、適正な価格が異なると言えます。ある意味、企業は芸術作品と同様で買い手の気持ち次第で値段は大幅に変動すると言えるのです。ブランドを買うために大金をはたいてM&Aをする企業もたくさんあります(だから、価格を決定するのに芸術作品で使われるオークションが一番いいと思い至ったわけですが)。
しかしながら、経済取引である以上、一般的に用いられる算定方法が大きく分類すると3つあります。

  • ①時価純資産+営業権
  • ②DCF法
  • ③比準方式

この中で一番使われるのが①の時価純資産+営業権で評価する方法です。時価純資産とは対象企業の貸借対照表に計上されている資産負債を時価評価した差額である時価純資産(清算価値とほぼ同値です)に、一定の方法で計算した営業権を加算する方法を言います。営業権の計算方法はいくつかありますが、通常は営業キャッシュフロー(または(EBITDA= Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization))の3年から5年分として算定します。

営業キャッシュフローは、営業利益+減価償却費です。役員が過大な報酬を取っている場合には、通常の給与額に修正することで、修正営業キャッシュフローを算定することもあります。

(例)
時価純資産 1,500万円
営業利益 100万円
減価償却費 400万円
役員報酬 1,200万円(通常の管理者報酬としては700万円)

このような会社の評価額はいくらになるかというと、

修正営業キャッシュフロー = 100万円 + 400万円 +(1,200万円 - 700万円)
              = 1,000万円

時価純資産+営業キャッシュフロー×3年分とすれば

1,500万円 + 1,000万円 × 3年 = 4,500万円 となります。

買い手から見ると、4,500万円を払うということは、1,500万円の資産(在庫や土地建物)を買って、なお将来3年間のキャッシュフローを支払ったということになります。将来3年間において事業が今年と同程度であれば、3年で3,000万円の資金が返ってくるわけですから、4年目からは丸儲けと考えてもいいと思います。

一方、買い手にはシナジーを考慮して価格を計算することもできます。たとえば、この会社を買うことによって、この会社のお客に自分の製品を売ることができ、その結果毎年500万円の利益が見込めるということであれば、修正営業キャッシュフローは1,000万円でなく1,500万円になりますので、2年で元が取れるということになります。このシナジーの大きさによって買い手にとっての適正価格というのが決まってくるのです。

3年分とするか、5年にするかは業種、業態、企業の状況などによります。不安定な市場であれば3年は長い気もしますが、安定的な成熟市場であれば5年とかの長期になります。アパート経営などは長期的な投資ですので7年から8年ぐらいを見てもいいのですが、IT業界など来年の受注がどうなるかわからないような場合には2年程度しか考慮されないこともあります。